「兄」子供時代

私には一つ年上の兄がいる。

幼い頃、兄は近所でちょっとした有名人だった。肌は白く、長い上向きまつ毛と丸くて大きな目をしていた。 一見女の子に見えるくらい、かわいい顔をしていたのだ。 「将来はアイドル歌手になるかも」大人達はそんな風に言っていた。

一方私はというと、どちらかといえばブサイクだった。まつげは下向きで、目は細くて垂れていた。 誕生時のサイズは兄よりも私の方が随分大きく、頭も大きかったので、よく壁や柱に激突していた。 だから、顔に生傷が絶えない子供だった。 

兄と私はよく二人で散歩に出掛けた。最後には決まって迷子になり、見知らぬ大人達に助けてもらって家に帰ってくるのだった。

「君はお兄ちゃんなんだから、妹をしっかり守ってあげるんだよ」

そう言って大人達は私の肩をポンと叩く。私のことをお兄ちゃん、兄のことを妹だと勘違いしていたようである。そういうことが何度かあったので、幼心にも 「私が兄を守らなければいけないのだ」 と思っていた。

兄が5歳、私が4歳の時、ちょっとした事件が起きた。兄が近所の悪ガキに追いかけられて腕の骨を折ったのだ。私はとても怒っていた。仕返しに行こうと思った。重い野球バットを引きずって玄関の所まで歩いていった。ドアノブに手が届かずもたついている所を母に見付かってしまい、私の「お礼参り」は果たせなかった。幼い私はただひたすらに、兄を守ろうと考えていたのである。