私の両親はとても仲が良い。父は決して寡黙なタイプではないが、母と一緒にいる時だけは寡黙になる。ならざるを得ない、と言うべきかもしれない。
両親の会話はほとんど母のワンマンショーだ。母が9割をしゃべっている。ピーチクパーチク、ピーチクパーチク。所々で父がつっこみを入れる。そのやりとりは非常に面白い。何とも言えない絶妙なタイミングであり、バランスなのだ。
以前、私は母と口ゲンカをしたことがあった。私は母を傷付けるようなことを言い、母を泣かした。一部始終を見ていた父は、私に向かってこう言った。
「お母さんを傷付ける者は許さない。例え娘であってもだ……。」
今度は私が泣き出した。父が味方してくれなかったことが悲しかったからではない。父がそんなにまで母を愛しているのだと分かったこと、それを私の前ではっきりと口に出して言ってくれたことに、感動して泣いたのだ。両親の仲が良いということは、素直に嬉しいものだ。
人は一人では生きてはいけない。「割れ鍋に綴じ蓋」 と言葉があったっけ。うちの両親はまさに字のごとく、二人でしっかりと支えあっている。何だかんだとケンカをしながらも、ぴったりくっついて生きている。
母は晩年、私によくこんな言葉を言っていた。「夫婦のことは夫婦にしか分からない。」傍目には仲良そうに見えたり、あるいは、悪そうに見えたり、と色々な見方がある。けれども、長年一緒に、家族というユニットを形成してきた土台である夫婦には、他人からは決して理解できない絆があるということを言いたかったんだろう。
