住み始めてずっと親切にしてくれていたナバホ女性が、ある時を境に私に冷たく接するようになった。原因が分からなかった。
その頃になると、彼らの敷地で一日中を過ごすのが嫌で、私は何かと理由をつけて外に出掛けるようになっていた。
その日は友人のマークの家に行った。事情を話してみると、彼は真顔で私にこう聞いた。
「その女性が君の事をうとましく思っている原因を、君は本当に分からないの?」
分からなかった。私はその男性にも女性にも、出来る限りの誠意を尽くしているつもりだった。
マークは思いがけないことを言った。
「その女性は君に嫉妬しているんだよ。 君が彼のことを奪ってしまうのではないかと恐れているんだ。 君はその男のことを好きなの?」
嫉妬? まさかね。 そんなはずは無いと思った。
私はその男性のことを友人として好きだし、そもそも彼の面倒を見てやってくれと頼んだのは彼女だった。
「彼は車の運転が出来ない。 だからどこか用事があるときには一緒に行ってあげて欲しい。 本当は自分がそうしなければいけないのだけど、自分には仕事があるので毎日そばについている訳にはいかない。 あなたが彼のそばにいてくれると助かるのよ」
だから私は、この男性のそばにいることが彼らの敷地にいさせてもらえる条件だと思っていた。
大体、私は、誰かから嫉妬されるなんて、今まで経験したことが無かった。 私に頼んでおきながら、嫉妬するなんて、矛盾している。 だから彼女が嫉妬しているなんて、あり得ないと思った。
マークはこう続けた。
「君はナバホの性格をもっと知らなきゃ。 ナバホの人達はとても嫉妬深いんだ。 勿論、全員じゃない。 良識のあるナバホだってたくさんいる。 でも、ナバホの人達の中で嫉妬深い人はすごく多い。 これが事実だ。 君はウィッチクラフトという言葉を聞いた事があるか?」
またこの言葉だ・・・。 「ある」と私は答えた。
マークはこう聞いた。
「俺はその男のことを知ってると思う。 そいつは以前、ミュージアムで働いてたことことがあるか?」
そう言えば彼からそんなことを聞いたことがある。
「そうだよ」と私が答えると、マークの表情は険しくなった。
「そうか・・・。 だったら君は、一刻も早くそこを出なきゃいけない。 君はもう彼らにウィッチクラフトをかけられているかもしれない。 捕らわれてしまっているんだ。 俺に分かるのは、君がそこに居続ければ、どんどん危険な状態になるということだ。 君はナバホの両親に相談しなきゃいけない。 君の両親は立派な人達だ。 きっと君を助けてくれる」
助けてくれるってどういうこと? そんなに危険な人達なの? 両親に助けてもらわないといけないくらい、私は危険な状態にあるの??
心臓がバクバクした。
マークはその日、「ナバホの両親に会いに行くこと」 と 「彼らの敷地から一刻も早く出ること」 を私に約束させた。
