翌朝は騒々しい歌声で目覚めた。ナバホ父の歌声だ。眠い目をこすりながら、もたもたとベッドの梯子を降りていくと、弟も同じように寝ぼけながら目をこすっている。
「何時?」と私が弟に聞くと、彼は言葉を発するのももどかしいらしく黙って時計を指差した。まだ朝の5時だ。
台所へ行くと、父がナバホ語で歌を歌いながら料理をしている。
「おはよう、俺のワンパク娘。 早く顔を洗って来い。 フレッシュコーヒーと俺の特性サンドイッチがある」
ナバホ母はまだベッドにいて、私に向かってにんまりと笑った。「うまい朝食を娘に食べさせて、娘を見送るんだって」
顔を洗ってダイニングテーブルに着いた頃には、席にみんなの分の朝食とコーヒーが盛り付けてあった。
父の作ってくれた朝食は美味しかった。具がたんまりと詰まった分厚いサンドイッチに、ハッシュドポテト。 父が料理できるなんて知らなかった。
父はこう言った。「ロサンゼルスまでの道中、気を付けるんだよ。 ゆっくり旅を楽しんでおいで。 今の君一番必要なのは、気持ちをリラックスさせること。 気持ちが落ち着いたら、ロサンゼルスから電車で帰って来い。 俺か母さんのどちらかで君を駅まで迎えに行くから。 戻ってきてからは、気持ちを新たにまた元気にここで暮らせば良いさ」
父はこうも言った。「戻ってくるのは水曜日以降にしなさい」
その日は土曜日だった。車を飛ばせば今日の深夜にはロスに着ける。 明日の夕方に電車に乗って、明後日の朝にはギャラップに着くことができる。
でも父は、戻りは水曜日以降にしなさいと言い張った。 父はメディスンマンだから、何かを察していたに違いない。
そこで私は道中で、セドナに立ち寄ることに決めた。 ロサンゼルスに着いたら1-2泊して、ビーチでローラーブレードをしよう。 それからロサンゼルスの友人と待ち合わせして、お気に入りのカフェに行くのも良い。 モカコーヒーを飲みながら、ニューヨーク・チーズケーキを食べよう・・・。
朝食が済んで両親と弟にそれぞれ固くハグをして、私はロサンゼルスに向けて旅立った。
