翌朝私はギャラップ駅に着いた。父が駅まで迎えに来てくれた。
父は私に会うなり、「今日の夕方、俺は大学でナバホ哲学についての講義をするんだ」と言った。昨日弟が電話口で言った「ちょうど良かった」とは、この講義に私が間に合うようにと思っていたのだろう。
それからバタバタと準備をして、両親と私の3人は大学へ向かった。
講義の最初に、父は母のことをこんな風に紹介した。
「私の大切なパートナーです。彼女は私の一部でもあります。私達が一緒になってから、もう 32 年の月日が流れました。私達は決して、仲むつまじい夫婦などではありません。しょっちゅう喧嘩をするし、離れようと思ったことも一度や二度どころでは無いからです。けれども最後には、いつも仲直りをすることになります。私は彼女と共に生きています。
彼女がいなければ、私はここまで来れていなかったと思います。普段は照れくさくてなかなか言葉にできないので、今日この場を借りて、私のパートナーにお礼を言いたいと思います。いつもありがとう」
母は薄っすら涙ぐんでいるようだった。それから父は私の方に向き直り、こう紹介した。
「この子は私達の娘です。血のつながりはないけれど、私達夫婦はスピリチュアルな方法で彼女を養子として迎え入れました。
彼女のスピリットは『優しい水・女性の水』です。彼女は gentleness そのものです。誤解してもらいたくないのは、この gentleness とは、人や環境に流されるような弱いものではないということです。
女性の水は、大地をしっとり潤してくれる命の源であり、エネルギーです。でもその優しいエネルギーの一方では、周囲のものを一気に流し去り環境をまるきり変えてしまうほどのパワーも秘めています。どんな武器や兵器や敵にも勝るほどの強さを秘めているのです。
彼女自身もそうです。私はこの子に初めて会った時、瞳の奥に秘められた強さに気付きました。ところが、彼女はまだ自分の中に潜んでいる強さに気付いていません。
優しさと強さの両方をバランス良く使えるようになることが、これからの彼女の課題です。 彼女にはまだまだたくさん学ぶ必要があるようです。
私達夫婦には息子が2人いますが、娘はいません。娘を持つのが初めての新米親ゆえに、娘にどう接すれば良いのかとまどうこともあります。一つ分かっているのは、彼女を娘として迎えてから、私達はかけがえのない経験をさせてもらっているということです。
彼女は自分のビジョンを信じて、この大地にやってきました。私達は彼女の勇気を尊敬しています。そして出来る限り助けてあげようと決めました。娘にも、今日この場をお借りしてお礼を言いたいと思います。私達の娘になってくれて、ありがとう。君が進む道のりはまだまだ遠い。一緒に頑張っていこう」
その場にいた人達全員が一斉に拍手をし始めた。それから1人ずつ立ち上がり、私のところまでやってきて握手をし、ハグをしてくれた。みんなそれぞれ 「頑張れ!」 と声を掛けてくれた。
嬉しかった。とても嬉しかったし、感動していた。
それから父の講義が始まった。
