「消防士の訓練」  ナバホ体験記

消防士のトレーナーをしている友人が、消防士のフィールド・トレーニングに招待してくれた。 ナバホ保留地の首都ウィンドウロックから4時間のハイクに行くというのである。

20人ほどの訓練生が4つのチームに分かれていた。 私はその内の一つに入れてもらい、最後尾に加わった。 チームは常に仲間の調子を見ながら進まなければいけない。 消防士の仕事はチームワークが成功を決める第一条件だかららしい。

私達は縦一列になって歩く。 自分の前を進む仲間が言った言葉は全て大声で繰り返すのがルールになっていた。

「足元注意!」「頭上注意!」「急な斜面だ、気を付けろ!」などなど。

私の前にいた青年はやたらと叫んでいた。「車だ!」「カラスだ!」「蛇だ!と思ったら棒だった!」など、つまらないことまで。しんどいので無視していると、「オイ、俺が言ったことをちゃんと後方に伝えてくれよ!」とニヤニヤと笑いながら後ろを振り返る。 汗だくでゼイゼイ言いながら必死で歩いている私をからかっていたのだ。 彼はまだまだ余裕の表情だった。

たかがハイクだと思っていたが、実際はキツイのなんのって…。 しっかり前後左右、上下を見て歩かなければ足をくじいたりこけたりする可能性もある。 普段使っていない神経や筋肉をフル活用して歩いた。

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突然、私の太ももにチクリと痛みを感じた。 虫にかまれたのだ。 クモなのかアリなのか定かではなかった。 ここには毒グモが存在するのを知っているので、不安になった。 私の異変に気付いた友人が、かまれたところを見せろと言った。

傷を見せると友人は、「アリだな」と言って、その周辺をしばらく歩き回って何かを探した。 探し物が見つかると、友人はその場所にしゃがみ込んで、ポケットから何やら取り出した。 タデディンバッグだった。 これはナバホなら誰でも持っているもので、お祈りに使うトウモロコシの花粉が入った袋だ。  友人は、私のために虫さされを癒す薬草を探してくれていたのだった。

彼はその薬草にナバホ語でお祈りをして、それからトウモロコシの花粉をオファーした。 それから、私にも同じ事をやるように言った。

「今からあなたを薬草として使わせていただきます。 どうか私の傷を癒して下さい」 と祈りを捧げ、トウモロコシの花粉をオファーしてから薬草を使う分だけ取らせてもらう。

友人はこの薬草の使い方を説明してくれた。

1) この薬草を数時間水に浸す。

2) 薬草が柔らかくなったら、指で軽くこすって薬草の汁を患部に塗りこむ。 大切なのは、そのときに薬草に対して感謝の気持ちを伝えること。

3) 翌朝は早く起きて、東の方角に向かって歩く。 同じような薬草が生えている場所を見付けて、まずお祈りをする。

4) 薬草をとして使わせてもらった事のお礼を述べる。 それから大地に使用済みの薬草を戻し、その上にトウモロコシの花粉をオファーする。

5) この作業は誰にも見られてはいけない。

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余談だが、ナバホなら誰でも薬草ハーブを知っているという訳ではない。 この友人の母親は、メディシンウーマンでハーバリスト(ハーブ研究者)だったので、彼は子供の頃から薬草に関する知識を学んだのだそうだ。