ピースメイキング概要 ナバホ体験記

何世紀にもわたって、ナバホの人々は独自のjustice methodで問題を解決してきた。これがナバホのピースメイキングと呼ばれる方法である。

アメリカ政府の介入があった1892年から1981年の約100年間は、ピースメイキングが公には行われなかった。

1982年、ナバホ政府はjudical conferenceにて、ナバホピースメイカーコートを正式に発足した。その後、ピースメイキングの技法は精力的にナバホの人々や外部の人々に向けて知識の共有を図っている。

伝統的なナバホの法的システムはクランの関係に基づく。実質的に血のつながりはなくとも、クランの上では家族、親族に当たることが多い。ナバホではこれを「拡大家族」としている。

ナバホ語でK’e、またはK’eiと呼ばれる言葉がある。これは、思いやり、協力、友情、利他的、平和などの意味を含む。この考え方は、ナバホのセレモニー、神話、伝統の至るところに散りばめられている。これらの価値観により、ナバホの人々は、個人ではなくすべての人々がつながっているという大前提が根底にある。

また、ナバホの考え方を示すナバホ語としては「Hozho」という語があるが、これは美や調和、バランスなどの意味を含む。人間同士の関係の調和、超自然的な存在(スピリットたち)との調和などを意味する。

こういったナバホ語の用語には、英語と一対一で翻訳できない用語が多くある。ナバホでは言葉の持つエネルギーはパワフルであり、どのように話すのかによって武器にも盾にもなると考えられている。

ピースメイカーは当事者がどのように言葉を話すのか、そのエネルギーの流れを読み取って、良い方向に向かおうとしているのか、あるいは悪い方向へ向かおうとしているのかを判断し、それに応じてアドバイスをする。

ナバホ語で「naat’aanii」という用語がある。これは英語ではリーダーと訳されているが、実のところこの用語の持つ意味はたった一語では訳しきれない。人を導く才能を兼ね備えている人、パワフルな人、賢く智慧に満ち溢れている人、先のことや見えないものを見る力を与えられた特別な人、という意味が含まれている。

この宇宙に存在するもの、生きているものすべて、動くものも不動のものも、正しくあるべき場所、存在するべき状態というものがある。これらが本来そうあるべき場所にない場合や、状態にない場合が、disorder(混乱)の状態である。ピースメイカーは、それらを本来あるべき姿、状態へと戻す手伝いをし、再び調和の状態を確立する。

ピースメイカーにできることは説得であり、強制ではない。説得の際には、先人の智慧から学べるように、物語や神話を例として使う。

厳密に言うと、ピースメイカーは完全なる仲介者という訳ではない。ピースメイカーなりの考えや意見を持て折、そちらの方向へと導くという尽力をする。それゆえ、ピースメイカーになるには、コミュニティで敬意を払われている人物であることが前提とされる。ピースメイカーに選任されるためには、ナバホの価値観やモラル、人間としての智慧を蓄えた賢者でなければならない。ピースメイカーはガイドであり、計画者であり、当事者両者に不調和を招いた状態を把握させるという役割を担う。

一般的な「仲介者」とは、完全に中立の立場を維持する弟三者のことであり、問題を起こした行為や結果そのものを議論するのだが、これとは対照的にピースメイカーは論争の源に焦点を置く。しかし、最終決定はあくまでも当事者の決断に委ねる。

つまり、ピースメイキングとは仲介をするのではなく、また二者択一の論争をするのでもない。

現在、ナバホ国の首都、ウィンドウロックには、世界各国からピースメイキングの手法を学びに訪問者が訪れている。カナダ、ジンバブエ、ナミビア、南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランド、フィジー、パプアニューギニア、スウェーデン、国連など。

ナバホでは父なる空、母なる大地、自然界のすべてのものに敬意を払い、すべてのものはつながっていると考えている。我々人間も自然界の一部なのだ。したがって、ナバホのピースメイキングを語る際には、ナバホ神話、理論、先人の教えの知識を共有するところから始めなければならない。西洋式の法体制は分離化・差別化を重視している。この点がナバホピースメイキングと大きく異なる点である。