14.スウェット・ロッジ ラコタツアー 

ラコタ兄の家に戻ると、みんなが暖かく出迎えてくれた。みんなは私達を待っている間に、チラシ寿司を作り、スウェット・ロッジ用の火の準備をしてくれていた。

落馬した女性の体調を考慮すれば、落馬した当日にスウェットに入るというのはかなり無謀なことに思えた。しかし、ラコタ兄は無理してでも参加してもらいたいと主張し、お客さん自身も参加したいと希望したので、全員そろってスウェット・ロッジ・セレモニーをすることになった。 

いよいよ、スウェット・ロッジ・セレモニーが始まる。ラコタ兄が始まりの祈りをラコタ語で捧げると、雨が降ってきた。遠くの方では、稲妻が光っている。雨は女性のパワー、稲妻は男性のパワーだ。「スピリット達が、このスウェット・ロッジを祝福してくれている」 とラコタ兄が嬉しそうに言った。

「今ここに、若いワシのスピリットと青い光のスピリットが来てくれている」 若いワシのスピリットは日中の光、青い光のスピリットは夜の光を象徴しているらしい。

今回のファイヤーマンには、若い男の子 が任命された。ファイヤーマンというのは、火の番人であり、”おじいさん”である聖なる岩をスウェット・ロッジの中に運び込んでくれる人だ。私も何度かやったことがあるが、想像していたよりずっと大変な役割なのだ。T はこの大役を任命されたことを、誇りに感じているようだ。

入る順番を決めて欲しい、とボスがラコタ兄に言った。ラコタ兄が指定した順番はこんな感じだった。

まず最初にラコタ兄。南側に女性軍。最初に 若い女の子、私、ラコタ兄の奥さん、落馬した女性、高齢者の女性二人組。それから男性軍。男性軍で一番年上男性、若い男の子、ボス、最後に ファイヤーマンの若い男の子。

“あれ?” と思った。“私が通訳なんだから、当然私がラコタ兄の隣でしょ? それに 落馬した女性は体調が悪いのだから、なるべく入り口に近い所に入れてあげるべきでしょ?”

瞬間的に、ラコタ兄の奥さんも同じことを感じたようだった。彼女は有無を言わさぬ口調で、ラコタ兄にぴしゃりとこう言った。

「ダメダメ。落馬したお客さんは体調が悪いし、スウェット・ロッジは今回全く初めてなんだから、私と通訳の間に座ってもらうわよ。そうすれば、私達2人で彼女のことを守ってあげられるからね」

ラコタ兄の奥さんは、落馬した女性客のことを気遣ってあげていた。

「熱くてしんどくなったら、頭を壁側の地面に向けると良いですよ。私は前の方に座って、壁側を空けておきますから…。辛くなったらすぐ、私か通訳に言ってくださいね」

やっぱりこの人はラコタ女性だ。さりげなくだが、確実にラコタ兄をサポートしてくれている。彼女がいてくれて良かった。

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スウェットが始まった。基本的に、スウェットの方法はそれを執り行う進行役によって異なる。下記に掲載するのは、ラコタ兄が進行役を務める、ラコタ式スウェットの方法である。

ラコタでは常に、4方向と宇宙と大地が自分につながっていると考える。その中心に自分というものが存在する。つまり、祈りを捧げるときは常に、7つの方向を祝福する言葉から始める。ラコタでの4方向は、西から始まる。西、北、東、南、という順番だ。

スウェットは第4ラウンドまである。

第一ラウンドは、自分達自身についての祈り。自分自身のこと、自分の持っている才能や特質、健康状態を認識する。すべて満たされていると感じるなら、そのことについての感謝を述べる。何か困っていることがあるなら、スピリット達にサポートをしてもらえるように祈る。

第二ラウンドは、両親や兄弟など近い血縁者のために祈る。自分という人間をサポートし、理解し、作り上げてくれたのは、家族なのだ。そのことに感謝の祈りを捧げる。もし家族の誰かが苦しんでいるなら、彼らがその苦しみから学びを得て、成長できるようにと祈る。

第三ラウンドは、ヒーリングのラウンド。ヒーリングが必要な人に対しての祈り。自分自身のことでも良いし、家族、友人のためでも良い。

第四ラウンドは、不要なものを手放すラウンド。私達はみんな、ネガティブな思考を持つ時がある。それらは次のステップへ進むため、成長するために必要なものだ。しかし、そこから学びを得て成長できた後には、ネガティブな思考をいつまでも持っている必要はない。だから、感謝の言葉とともに、それらを宇宙に手放してやらなければならない。

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第二ラウンドの途中で、ラコタ兄が私の肩をしきりに叩いている。ヒソヒソ声で私にこう言った。

「君に伝えなければならないことがある」

彼はこんなことを言った。

「青い光が見えるか? 君の目の前でチラチラと光を放っている」

目を凝らして、ラコタ兄の言う “青い光” とやらを見ようと頑張ったが、私には見えなかった。でもラコタ兄がそう言った時、既に私は自分の周りにスピリットの存在がいることを感じていた。

ラコタ兄はこう続けた。

「青い光は君のスピリットだ。君にメッセージを伝えて欲しいと言ってる。」

「スピリットが君に、“今取り組んでいる仕事、イエスカの仕事をしっかり続けなさい” と言っている。イエスカ (iyeska) というのは、ラコタ語で通訳者という意味だ」

それを聞いた途端、私は声を上げて泣き出した。

スピリットからのメッセージは続いた。

「イエスカの仕事は、とても重要な仕事だ。私達は君の助けを必要としている。大変な仕事ではあるが、君の歩いている道をこれからも歩み続けていきなさい。私達はいつも君のそばにいて、君を助けている。私達が君をイエスカに選んだ。君は選ばれし者なんだ」

「スピリット達が君のことを心配している。君がこの仕事をあきらめてしまうのではないかと…。自信を失ってしまっているのではないかと…。」

“You’re the chosen one.” の部分が、頭の中でエコーのように響いた。

本当のことを言うと、その時の私はすっかり自信を失っていた。

自分は全く役に立っていないのではないか? スウェットが終わったらボスに話そう。7月のツアーの通訳はお断りしよう。きっと次回は、他の人に通訳をやってもらった方が良いに決まってる…。 

そういうようなことを、ぼんやりと考えていたのだった。だからこのメッセージは、本当に良いタイミングで聞くことができた。