ベアビュートからの帰り道、私達はみんな非常に空腹だった。ラコタ兄の家まで戻って、料理をするまで、とてもじゃないけど待てるはずがない。そこで、途中のピザ屋で夕食をとることにした。
本来なら、ピザとくればビールも一緒に注文したいところだが、誰もビールを注文したりはしなかった。ラコタ兄のことを気遣っての、暗黙の了解だ。というのも、ラコタ兄には過去に、アルコール中毒で自暴自棄になっていた頃がある。やっとの思いで酒を絶ち、何年もそれを維持しているという話を、本人から聞いた。彼にとっては非常に辛い過去だ。常日頃、お世話になっているラコタ兄に、またそれを思い出させるつもりなど誰にもなかったのだ。
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ピザ屋を出た頃にはすっかり日は落ちていて、辺りは真っ暗になっていた。帰り道の車は、私が運転をし、若い女の子のツアー参加者が助手席に座った。後部座席には若い男の子が座っていたのだが、やがて彼は疲れ果てて眠り込んだ。
もうそろそろ、ツアーも終盤に差し掛かる。辺りは真っ暗だったし、共にいろんな体験を共有した仲間ということもあってか、彼女は私に心を開き、ポツリポツリと自分自身のことについて語り始めた。
彼女は27歳で、プロのカメラマン。華奢な体で、声も小さいので、一見とてもおとなしそうに見える。
でも彼女の内側には、とても強いパワーが備わっている。そのことは、私もボスも、そしてラコタ兄もちゃんと気付いていた。
彼女は今、迷いの道を歩んでいる最中のようだ。
まだ自分のビジョンが見付からない。 家族のこと、恋人のこと、仕事のことなどで、自分がどう進んでいけば良いのか、何を目標にしていけば良いのかが分からない。自分には、相手の気持ちを深読みしすぎるところがある。結局の所、自分を守ろうとしすぎているのかもしれない。自分のやる事なす事すべてに自信が持てなくて、前に進むのが怖くてたまらない。
そんなようなことを彼女は話していた。私はラコタ兄から彼女に伝えておいて欲しいと言われた事を話した。それから、私は彼女にこんなようなことを話した。
今のあなたに必要なのはまず、自分を知り、認めてあげること。自分を好きになってあげること。他の人には無い、あなただけに与えられたギフトに気付くこと。
あなたには特別なギフトが備わっている。そのことに気付いてあげなければいけない。スウェットの中であなたが見たと言っていたスピリット達の姿は、紛れもなくホンモノなんだよ。スウェットの中で感じたこと、体験したことはすべてホンモノなんだよ。他の誰にでも感じたり、体験できたりするものじゃない。あなたを守っているスピリット達がそうさせてくれてるんだよ。
あなたは決して一人きりじゃない。あなたの周囲には、いつもあなたの事を応援し、励まし、導いてくれているスピリット達が存在するからね。あなたが自分を知り、認めてあげて、そしてあなたのことを守ってくれているスピリット達の存在に気付き、感謝するようになると、スピリット達はあなたのことを今までよりももっと守りやすくなる。
自分に自信が無い、自分を好きじゃないってことは、守ってくれているスピリット達に対して失礼だよ。自信持って良いんだよ。先に進んだって良いんだよ。たとえそれが、結果的に思い通りの方向に進まなかったとしても、それは次のステップに進むために必要不可欠な学びだったんだから…。この世で起こる事はすべて必然。無駄な事なんて一つも無いんだよ。
これらのことは、彼女のスピリットが私の口を通して「言わせ」たものだ。私はこの時、彼女を助けるために、純粋な道具になっただけなのだ。
実はね、私もあなたの年齢の時に、同じ体験をしたんだよ。当時付き合っていた男の子から、全く同じ事を言われたことがあるの。その時の彼も、今の私と同じことを言ってた。“君のスピリットが僕の口を借りているだけ。これは君のスピリット、つまり君自身の言葉でもあるんだ” ってね。
私もあなたの年齢の頃には、確固たるビジョンを持っていなかった。探し始めたばかりだった。それから徐々に、色んな方法で、ビジョンを確信していった。
私の場合、次のステップに進むために大きく貢献してくれたのは、当時付き合っていた男の子だった。彼と別れた後、私は一人で旅を続けた。そうして、ナバホのメディスンマンとかヒーラーの友人達の口を通して、また自分自身の白昼夢 (いわゆる視覚的なビジョン) や夢を通して、自分のビジョンを得てきた。
ビジョンを得てからも、まだまだ進むべき道のりは長い。全く形になっていないかもしれないって感じることもある。でも、通ってきた道を振り返ると、随分進歩してきたとも感じる。
迷いの道は、誰でも通る道。それなら、それを楽しんじゃうっていうのも手だよね。
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あのとき時間を共有した私の友人へ
あなたと話していて、いろんなことを思い出すきっかけをもらいました。あなたの言った言葉が初々しくて、初心にかえらせてもらえたような気がします。
貴重な時間をどうもありがとう。この日、あなたと共に過ごせたこと、話せたことに感謝しています。
