20.脱水症状 ラコタツアー 

翌日は、バッドランド国立公園へ観光に行った。目的地に着いた辺りから、私はバテテいた。景色が荘厳ですばらしかったのはおぼろげに覚えているが、実を言うとこの日の記憶はあまり残っていない。空気が乾燥していて、異様な熱気だったのだ。

その日は最後の夜だったので、豪勢にステーキを食べに行くことになっていた。レストランの予約は夜7時。私達一向は夕方5時ごろモーテルに到着し、シャワーを浴びてからレストランに出掛けることにした。

シャワーを浴びると、一気にバテた。レストランに出発するまでの間に、私はビールの買出し役を仰せつかっていたのだが、立っているのも大変なくらいフラフラしている。そこで、買出しは他のメンバーに頼み、出発までの一時間ほど、私は仮眠を取ることにした。

ベッドに入ったのが、5時半だったことは覚えている。6時20分にツアーメンバーが私を呼びに来てくれたのだが、この一時間の記憶が全く無い。どうやら完全にノックダウン状態だったようだ。

みんなとの最後の夕食になるのだし、行きたかった。けれど、車に乗り込んだ瞬間、やはりまだ眠気が残っていてフラフラしている。とても行けるような体調ではない。

そこで、夕食は断念して、私だけモーテルに残らせてもらった。みんなが戻ってきたのは、9時半頃。この3時間の記憶も全く残っていない。

先ほど迎えに来てくれた女の子が、また私の部屋まで呼びにきてくれた。 私はノロノロとベッドを這い出た。それから、メガネが無いことに気が付いた。ベッドサイドテーブルやら、ベッドの下やら、洗面所やらを必死で探し回ったのだが、見付からない。

あきらめて、ボスの部屋まで行き、「遅くなってすみません。メガネを探していたんですけど、見付からなくって…」 と詫びた。

ボスとラコタ兄は、変な表情で私を見ている。

何でだろう? メガネが無くなったことは、私にとっては大事件なんだけどな…

……しばしの沈黙……。

それからボスが、おもむろに私の胸ポケットを指差した。

……!!……。

私のメガネは、私の胸ポケットにしっかりと収まっていた!

ボスとラコタ兄はこらえ切れなくなり、吹き出した。

「教えるのを、もうちょっとじらしてやろうかとも思ったんだけど、かわいそうになってな」

それからボスは、真剣な表情で私に聞いた。

「お前、今日、どれくらいの水を飲んだ?」

はっとした。そう言えば、今日は朝から全然、水を飲んでいない。普段の私は、毎日水を2リッターは確実に飲んでいる。旅行中もそれは実行していた。その日、全く水を飲んでいなかったのは、たまたま手元に水が無かったからだ。昨日のベアビュートで水を飲みきってしまっていたので、今日の分は持っていなかったのだ。

ボスはこう言った。

「君は脱水症状を起こしているんだよ。水を買いに行こう」

そう言って私達は近くのスーパーまで水を買いに行った。

ボスは私にスポーツドリンクのゲータレードを買うように勧めた。そこで私は、ゲータレードと水を数本、購入した。お金を払い終わるとすぐに、ボスがゲータレードを飲むようにと言った。

あまり喉は乾いてないんだけどな… と思いながら、私はゲータレードの蓋を空けた。

それから僅か数秒で、私は1リッター入りのゲータレードを一気に飲み干し、さらに1リッター入りの水も半分くらい飲み干した。

ボスは私の方を見てニヤリと笑い、こう言った。

「な、脱水症状だ。普通の人はそんな量の水分を一気に飲めないぜ」

後から聞いた話によると、本当はこういう飲み方をしてはいけないらしい。これ程のひどい脱水症状を起こす前に、水を少量ずつ適度に体に入れておかなければならないのだ。

みなさん、あの日はご心配をお掛けしました。あの時の私の体調不良は、私の不注意による脱水症状から来たものでした。