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ピースメイキング機関 ナバホ体験記
ナバホ父は、数年前にナバホピースメイキング機関という非営利団体(一応、会社登録をした)を立ち上げた。私とナバホ父は将来、この会社の延長のアクティブティとして、世界中の人をナバホ国に招き、セッションをしたいという夢を持っている。参加者が宿泊できるように、現在、ナバホ両親の家の敷地内に B&B (ベッドアンドブレックファースト)となる建物を建設中である。 但し、この建物の建設はすべて自分達が手作業で行なっているため、非常にゆっくりなペースでしか進んでいない。 現在の時点では、基礎工事と外壁が終わったばかりである。
それでは、このインスティテュートの使命および目標をここに掲げておきたい。
1.世界各国から参加者を集い、ナバホ国に招待する。 このステップでは、ナバホの人々に伝わる知恵を参加者に共有する。 参加者達は、大地と共に生きる方法や、自然界に生きるその他の生物、動物や鳥達、爬虫類、植物などと共存共栄するために必要な知恵を学ぶ。
2.参加者達の生活している場所では、大地と共に生きるためにどのような方法が行なわれてきたのかを、参加者達が発表する。 参加者達の国の先人たちが守ってきた伝統や知恵を発表し、それらが現在どのようになったのかという変貌についても発表する。 先人たちの知恵をもう一度見直し、生活環境を変えるためにはどんなことができるのかを、具体例を出しながら、意見を出し合う。
3.ナバホの人々の生活振りを見せてもらうため、伝統的な暮らしをしている人々を訪問する。 ナバホの聖地を訪問し、その場所に言い伝えられている先人の知恵や神話を学ぶ。
4.参加者達が今回のナバホ国訪問で得られた情報について、さらに話し合う。 参加者全員が意見を発表する機会を設ける。
5.各人にできることを、皆の前で意思表明する。
6.参加者が自分達の住む国に戻った後、実現できたことや実現が難しいことなどを報告しあう。 このプロジェクトは、まだ私とナバホ父との間で、試行錯誤を繰り返している段階である。 ナバホの理念に基づくなら、私達は今、黒の段階に入ったばかりだ。 しかし、このプロジェクトは必ず、今の黒の段階から、黄、青、白の段階へと進んでいくと、私は確信している。
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ピースメイキングセッション(感想) ナバホ体験記
ある日のピースメイキングの講演会では、参加者が白人、ホピ、アパッチ、カイオワなどのネイティブインディアンの人々という風に異なる人種が集まった。このセッションでの参加者の感想が特に印象的だったので、ここに記録しておきたい。
イギリス人とドイツ人のハーフの男性
「私は誰よりも短気な性格で、そのことがいつも嫌で仕方がなかった。 しかし、今回の講演会に参加して、怒りを無理に抑える必要はないのだ、と分かった。 怒りを表現することによって、相手に気付かせることもできるし、話し合いを始めるきっかけを作ることにもなる。自分のことを頭ごなしに否定するのは、今日限りでやめようと思った」
アメリカ人女性
「私はずっと白人社会で生きてきたので、幼少時代から議論の方法を叩き込まれて成長した。 議論の時には、いかに相手に負けないように自分を表現するのか、ということに執着してきた。 しかし、今日の講演会に参加して、常に勝ち続ける必要はないということ、常に自分の意見を主張し続ける必要はないということ、時には話し合いの場に参加して、他の参加者達の意見に耳を傾けるのみでも良いのだということが分かった。 相手を打ち負かすことに重点をおいてきた自分にとっては、これらのことに気付けたことが貴重な体験になった」
幼少時代をナバホ国で過ごした、アメリカ人女性
「私は幼少時代をナバホ国で過ごしたので、自分が白人だという感覚はなかった。成人して都会に移り住み、普通のアメリカ人の中で生活するようになって初めて、いかに貴重な体験をナバホ国でさせてもらっていたのかということに気付いた。
今回の講演会を聞いていて、プエブロ族のダンス会場での出来事を思い出した。 ネイティブの人達のダンス会場では、最前列に老人や子供のための座席を用意していることがある。 ネイティブなら誰でもそのことを知っているので、前の方が開いていたとしても、決してその場所を占拠したりしない。 しかし、その日は白人のツアー客も観光に来ていた。 ツアー客達はまっすぐに開いている座席に腰を下ろした。 自分は、その人達と同じ種族であることを恥じるだけで、何も行動を起こせなかったのだが、一人の勇気あるネイティブの青年がそのツアー客のところへ行き、事情を説明した。 するとツアー客は快くその席を空けてくれたのだった。
そのときに私は、行動しなかったことを恥じた。 今日の講演で学んだ通り、白人のツアー客はただ知らなかっただけ。 ネイティブの青年は自分の持っている知識を共有することによって、ツアー客をプエブロ族の一員に引き込むことに成功したのだし、相互理解のための一助にもなった。
ホピの男性
「1880年代、ホピ部族の代表はアメリカ政府と話し合いを持つため、ワシントンDCに招集された。だが、ホピの代表者達は分かっていた。自分達が都会に出て行けば、立ち振る舞いも分からずにみじめな負け方をするだけだと。
1885年春、18人のホピがアルカトラズ刑務所に入れられ、2年間収容された。
その頃、ホピの人々がキバに集まって話し合いの場を持った。ホピが生き残るためには、白人の言葉、白人の考え方を学ばなければならない時代に入った。 ホピはあくまでもホピとして生きていきたかったのだが、白人の文化を受け入れなければ、ホピの言葉や生活習慣も滅びてしまう。
今まで、白人の文化を受け入れることは負けることだと感じてきたのだが、今回の講演の中で、受け入れることが一つの解決策のきっかけになるかもしれないと感じた」
カイオワの男性
「今回の講演を聞いて、自分がカイオワであるというアイデンティティをもう一度見直し、誇りを持つ機会が与えられた。 ネイティブの人達は、大地にしっかりと根付いている。 だからこそ、大地に対する愛情が深いのだ。 今日の講演で、知識を共有することの大切さを学んだので、今後は部族内での知識の共有や、広く白人の人達への知識の共有にも携わっていこうと思う」
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クリスタルゲイジング ナバホ体験記
ある日、ナバホ父が私をピースメイキングの講演に誘ってくれた。講演の前日はナバホ父の古い友人宅に泊めてもらうことになった。
その友人の家は郊外にある一軒屋で、取り立てておかしいところはなかった。
しかし、一歩家の中に入ると、何かとても悲しくて苦しい感情が押し寄せてきた。
友人は私達に冷たい飲み物を提供してくれて、3人でしばらく談笑をしたのだが、その間中、私はむしょうに外の空気を吸いに行く必要性を感じた。
二人にお詫びを言ってバルコニーに出ると、さらにネガティブな感情が悪化した。吐き気がして、立っていられないほどになったのだ。あまりにも突然すぎる出来事だったので、何が何だか分からなかった。
バルコニーから部屋の中に戻った瞬間、父は私の異変に気付き、「窓を開けておけ」と言った。
あまりにも吐き気がひどかったため、父に対してうなづくことすらできず、私はトイレに駆け込んで、一気に吐いた。吐きながら涙が出てきて、激しい嗚咽が漏れる。だが、その理由は全く分からなかった。そのときには特に悩み事も無かったし、悲しくなる要因も無かったからだ。
吐き終わった後、平静を装って部屋に戻った。父には心配をかけたくなかったからだ。しかし、父は静かな口調でこう言った。 「用心しなさい。黒い影が君の後ろをついていったのが見えた」
ぞっとした。確かに何かが後ろをついてきている感覚はあったのだが、父から指摘されなければそのまま気のせいだと思い込もうとしていた。
その瞬間、友人の愛犬トビーが「そうだ、そうだ」と言わんばかりに、私の背後に向かって激しく吠え立てた。
父は静かに私に手招きをして、父の目の前に座るようにと指示した。
父はメディスンバッグからセージとクリスタルを取り出した。
「今からクリスタルゲイジングをして、君の後ろについた黒い影の正体を教えてもらう。黒い影が伝えたいことを知って、癒してあげて、君を解放するように頼んでみよう。そうでなければ、君はずっとそのネガティブな想いに支配されてしまう」
父はまず、何もしていない状態でのクリスタルを私に覗かせた。「この状態を覚えておきなさい。クリスタルゲイジングの祈りの後では、クリスタルの見え方が異なってくるからー」
それから父は、ナバホ語でチャントを唱えながらクリスタルをセージで浄化した。
祈りを終えて、父はクリスタルを覗き込んだ。しばらくしてから、父は「大体の事情は分かった」と言った。
そして、私の方に向き直り、こう言った。 「君自身がクリスタルから情報をもらって、君が癒しのための祈りをしなければならない。クリスタルに祈りを捧げてから、どういう事情なのか、この黒い影が何を求めているのかを教えてもらいなさい」
真摯な気持ちになってクリスタルに祈りを捧げ、クリスタルの中を覗き込んだ。私の勘違いなのか、クリスタルは祈りを捧げる前とは見える光景が異なっていた。女の人が頭を下げている姿が見える。「悲しい、悔しい、どうしてなのか分からない、なぜ? なぜ私が?」そんなような単語のイメージが次々に湧き上がる。その意味が分からなかった。
「クリスタルが教えてくれたことを話してごらん」と父が私に言った。
私は自分に見えた光景、感情に対して半信半疑だったので、父には「何も視えないし、何も感じない」と嘘をついた。間違うことが怖かったし、自分にそういう力があるとは信じていなかったのだ。
父はじっと静かに待っていた。「自分の視たもの、感じたものを信じなさい。君には俺と同じものが視えているって分かっているんだよ」と優しく言ってくれた。
その言葉に助けられ、私はぽつぽつと視たもの、感じたものを父に話した。
そのとき父と私に視えていたのは、以前この家に住んでいた黒人女性の姿だった。この家で見知らぬ人に暴力を受け、ひどく殴られて殺された。目玉が飛び出るほど殴られて、レイプされた。女性は死んでからも、理由が分からないまま、この場所で誰かに助けてもらおうとしていた。どこに行けば良いのか、どうすれば良いのかわからずに・・・
私と父は彼女に対して話しかけた。
「この場所で痛みを伴い、苦しみを味わい、辛い想いをしたんですね。あなたの辛さは十分伝わりました。その痛みや苦しみは今日で終わりにしましょう。なぜなら、あなたはもうこの世界に肉体を持たないスピリットになったのだから。あなたの故郷であるスピリットワールドにまっすぐ戻ってください。そこでは、あなたに近いスピリット達が待っていてくれて、あなたの受けた傷を癒してくれます。いつまでもここに残って、苦しんでいる必要はないのですよ。どうか、苦しみや怒りを手放して、まっすぐスピリットワールドに帰ってください」
祈りを捧げている間に、ネガティブな空気が段々と晴れていった。そうして、いよいよ女性のスピリットがここを去ること決断をしたんだなと思った瞬間、トビーが天井に向かって「クゥン」と小さく鳴いた。天井が数回、ミシミシと音を立てて、その後はシンと静まり返った。
父と私は互いに顔を見合わせ、「彼女はスピリットワールドへ向かったんだね」と言った。
それが、私の初めてのクリスタルゲイジング体験だった。
それから父は、少年のようないたずらっ子の表情で私にこう言った。
「俺の娘は素直じゃないなー。視えていたくせに、どうして視えないなんて嘘をつくんだ? 正しい場所で正しい人といるときには、素直になって良いんだよ。君はスピリチュアルな道を歩いていくために、もっともっと修行を積む必要があるな」
