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  • 「車購入 第二弾」  ナバホ体験記

    また長期滞在が出来ることになったので、再度車を購入することにした。今回の予算は1000ドル以下。絶対条件は4駆車であること。それ以外は妥協するつもりだった。

    前回と同じようにアルバカーキへ出向き、売りに出ている車を探したが、大抵は2000ドル前後。なかなかピンとくる車が見付からない。探し始めて一週間後、800ドルで売り出されていた83年もののスバル(4WD)に出会った。今回も見た瞬間に「コレダ!!」と感じたので即決購入。値段は750ドルにまけてもらった。

    見た目はオンボロでいかにもレズカー(保留地仕様の車 Reservation Car)という風貌だったが、よく走ってくれたので非常に満足していた。

    ところがこのスバルちゃんは、購入日からわずか2週間でダウンした。デコボコ道を走行している途中でいきなりエンジンが停止してしまったのだ。でもそこは保留地内である。車が止まって数分しか経っていないのに、車に詳しい友人が「たまたま」そばを通りかかってくれたので、友人がすぐに修理してくれて、スバルちゃんはまた走り出した。その時掛かった費用は7ドルのみ。友人はディストリビューター・キャップの接続部が磨耗していると言ったので、この部品を交換するだけで良かった。

    それから4日目、家を出て5分ほどすると、またエンジン停止。今回は普通に走行中に故障してしまったのだ。車を脇に寄せて、ナバホ父のオフィスまで歩くことにした。

    道路脇を歩き始めると、何台もの車が止まってくれる。別に親指を出してヒッチハイクをしようとしている訳でも無いのに、「乗せてやろうか?」と申し出てくれる車が多い。最初の3台は丁重にお断りしたのだが、4台目の車が止まった時は私も歩き疲れていたので乗せてもらうことにした。

    ドライバーは40代半ばの男性。彼は何やら飲み物を飲みながらの運転。よく見ると、何とそれはビールではないか?「あのぅ、それってビールに似てますよね?」と聞くと「似てるというかビールだよ。」との返事。!!マズイ!!そこでまた、丁重にお礼を言って、車を降ろしてもらった。もう、知らない人の車に乗せてもらうのはやめることにした。

    やっとの思いでナバホ父のオフィスに辿り着いたが、あいにくナバホ父は外出中。仕方が無いのでまた車の所までトボトボ歩いて戻った。

    私の車が見える距離まで歩くと、そこには人だかりが出来ていた。ナバホ母、ナバホ弟A,ナバホ弟Bと友人TとM。私の車の後ろには3台の車が停まっている。私の車が道路脇に停まっているのを見付け、ビックリして集まってくれたらしい。

    「電気系統のどこかが故障してるんだろう。」という結論に至ったのだが、修理できる人が誰も居なかったので、その日はナバホ弟Aのトラックで牽引してもらい、家に戻った。

    その日は特に心配していなかった。またすぐに直るだろうと確信していたからだ。


  • 「消防士の訓練」  ナバホ体験記

    消防士のトレーナーをしている友人が、消防士のフィールド・トレーニングに招待してくれた。 ナバホ保留地の首都ウィンドウロックから4時間のハイクに行くというのである。

    20人ほどの訓練生が4つのチームに分かれていた。 私はその内の一つに入れてもらい、最後尾に加わった。 チームは常に仲間の調子を見ながら進まなければいけない。 消防士の仕事はチームワークが成功を決める第一条件だかららしい。

    私達は縦一列になって歩く。 自分の前を進む仲間が言った言葉は全て大声で繰り返すのがルールになっていた。

    「足元注意!」「頭上注意!」「急な斜面だ、気を付けろ!」などなど。

    私の前にいた青年はやたらと叫んでいた。「車だ!」「カラスだ!」「蛇だ!と思ったら棒だった!」など、つまらないことまで。しんどいので無視していると、「オイ、俺が言ったことをちゃんと後方に伝えてくれよ!」とニヤニヤと笑いながら後ろを振り返る。 汗だくでゼイゼイ言いながら必死で歩いている私をからかっていたのだ。 彼はまだまだ余裕の表情だった。

    たかがハイクだと思っていたが、実際はキツイのなんのって…。 しっかり前後左右、上下を見て歩かなければ足をくじいたりこけたりする可能性もある。 普段使っていない神経や筋肉をフル活用して歩いた。

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    突然、私の太ももにチクリと痛みを感じた。 虫にかまれたのだ。 クモなのかアリなのか定かではなかった。 ここには毒グモが存在するのを知っているので、不安になった。 私の異変に気付いた友人が、かまれたところを見せろと言った。

    傷を見せると友人は、「アリだな」と言って、その周辺をしばらく歩き回って何かを探した。 探し物が見つかると、友人はその場所にしゃがみ込んで、ポケットから何やら取り出した。 タデディンバッグだった。 これはナバホなら誰でも持っているもので、お祈りに使うトウモロコシの花粉が入った袋だ。  友人は、私のために虫さされを癒す薬草を探してくれていたのだった。

    彼はその薬草にナバホ語でお祈りをして、それからトウモロコシの花粉をオファーした。 それから、私にも同じ事をやるように言った。

    「今からあなたを薬草として使わせていただきます。 どうか私の傷を癒して下さい」 と祈りを捧げ、トウモロコシの花粉をオファーしてから薬草を使う分だけ取らせてもらう。

    友人はこの薬草の使い方を説明してくれた。

    1) この薬草を数時間水に浸す。

    2) 薬草が柔らかくなったら、指で軽くこすって薬草の汁を患部に塗りこむ。 大切なのは、そのときに薬草に対して感謝の気持ちを伝えること。

    3) 翌朝は早く起きて、東の方角に向かって歩く。 同じような薬草が生えている場所を見付けて、まずお祈りをする。

    4) 薬草をとして使わせてもらった事のお礼を述べる。 それから大地に使用済みの薬草を戻し、その上にトウモロコシの花粉をオファーする。

    5) この作業は誰にも見られてはいけない。

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    余談だが、ナバホなら誰でも薬草ハーブを知っているという訳ではない。 この友人の母親は、メディシンウーマンでハーバリスト(ハーブ研究者)だったので、彼は子供の頃から薬草に関する知識を学んだのだそうだ。


  • 「虹」  ナバホ体験記

    ご存知の方も多いと思うが、ナバホではアニミズムを信仰している。この世の中にあるすべてのものに精霊が宿ると信じているのだ。自然現象はすべて意味があって起こることだとされている。中でも虹は「ホーリー・ピープル」からの祝福とされ、敬意を払っている。

    これはナバホ神話に由来する。ナバホ神話に登場する英雄「双子の兄弟」が、父である「太陽」に会いに行く際に「虹」の橋が表れて、双子を無事に父の元に送り届けてくれるのである。

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    ナバホの大地で虹を見かけたら、あなたのそばにいる大事な人とその祝福を分かち合って下さい。

    但し、虹の方角を示すのは、親指を使わなければいけません。 人差し指で差すのはタブーとされています。

    ナバホでは人差し指は「邪悪なもの」を差す場合にしか使わないので、人を指し示す場合も人差し指を使ってはいけないのです。