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19.演奏会 ラコタツアー
その日、私達にはお客さんがいた。ラコタ兄の友人で、ミュージシャンであるラコタ男性だ。
彼には日本人の友人がいて、その人とはもう 30 年以上の付き合いになるのだとか…。そのせいもあって、彼は普通の日本人よりも、日本の歴史や文化、料理に詳しい。
彼は毎年、ボスの主催するこのツアーの時、ラコタ兄の家を訪ねてくる。今回も例年のごとく、私達日本人と出会う事を楽しみにしていたそうだ。
長身で、スラリとしたルックス。長い黒髪を後ろで束ねていて、彫りの深い顔立ち。目は茶色。なかなかの男前だ。服装は、デニム地のシャツに同系色のジーンズを合わせている。…と、そこまでは至って普通である。ところが、彼の出で立ちの中で、一箇所だけ私の目を釘付けにした箇所があった。 足元だ。 何故か、靴はスニーカーではなく、黒の革靴だった。
話の折々で彼は、 “僕は美的センスに優れている。芸術や美しいものには目がない” と話していただけに、このセンスが不思議でたまらなかった。 彼は “僕はビジネス・センスにも長けていて、お金に困った事は無い” とも話していたので、 “保留地で黒の革靴”は彼が金持ちであることを強調する目的があるのかもしれない。 私はそんな風に無理やり自分を納得させた。
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それはさておき、話を元に戻そう。
彼が私達を訪ねてきたメインの理由は、彼がミュージシャンで、日本人と音楽のセッションをしたかったからだ。
今回のメンバーの中に、三線を持ってきていた男の子がいた。彼は三線で沖縄の歌を弾き語りしてくれて、ラコタ男性 はギターの弾き語りとフルートの演奏を聞かせてくれた。
そのときに男の子が歌ってくれた沖縄の歌が、私はとても気に入った。メロディがとてもきれいで、美しい青い空、青い海の映像が目の前に浮かんでくるような曲だった。
私はこの曲の歌詞をおぼろげにしか覚えていなかったので、歌詞は本人に直接教えてもらった。(ありがとう)
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それはまーちゃんという人の曲で、曲のタイトルは 「宝物」。 沖縄の方言で ”ぱいぬかじぴとぅ” と読むらしい。
人はなぜこの星の悲しみがわからないの?
青い空、青い海ーーそれはみんなの宝物
花の咲くこの星に生まれて良かった
鳥の鳴くこの星に生まれて良かった
私のかえらない命、島とともにありますように
いつまでもこの星とともにありますように
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ラコタ男性 もこの曲をとても気に入っているようだった。
「いつか、この曲を作った人と会い、この曲の歌詞をラコタ語に変えて歌ってみたい」 と言っていた。
その夜私達は、遅くまでこの小さな演奏会の観客となった。
お二人とも、きれいな曲を私達に共有してくれて、どうもありがとう。
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18.あるツアーメンバーとの対話 ラコタツアー
ベアビュートからの帰り道、私達はみんな非常に空腹だった。ラコタ兄の家まで戻って、料理をするまで、とてもじゃないけど待てるはずがない。そこで、途中のピザ屋で夕食をとることにした。
本来なら、ピザとくればビールも一緒に注文したいところだが、誰もビールを注文したりはしなかった。ラコタ兄のことを気遣っての、暗黙の了解だ。というのも、ラコタ兄には過去に、アルコール中毒で自暴自棄になっていた頃がある。やっとの思いで酒を絶ち、何年もそれを維持しているという話を、本人から聞いた。彼にとっては非常に辛い過去だ。常日頃、お世話になっているラコタ兄に、またそれを思い出させるつもりなど誰にもなかったのだ。
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ピザ屋を出た頃にはすっかり日は落ちていて、辺りは真っ暗になっていた。帰り道の車は、私が運転をし、若い女の子のツアー参加者が助手席に座った。後部座席には若い男の子が座っていたのだが、やがて彼は疲れ果てて眠り込んだ。
もうそろそろ、ツアーも終盤に差し掛かる。辺りは真っ暗だったし、共にいろんな体験を共有した仲間ということもあってか、彼女は私に心を開き、ポツリポツリと自分自身のことについて語り始めた。
彼女は27歳で、プロのカメラマン。華奢な体で、声も小さいので、一見とてもおとなしそうに見える。
でも彼女の内側には、とても強いパワーが備わっている。そのことは、私もボスも、そしてラコタ兄もちゃんと気付いていた。
彼女は今、迷いの道を歩んでいる最中のようだ。
まだ自分のビジョンが見付からない。 家族のこと、恋人のこと、仕事のことなどで、自分がどう進んでいけば良いのか、何を目標にしていけば良いのかが分からない。自分には、相手の気持ちを深読みしすぎるところがある。結局の所、自分を守ろうとしすぎているのかもしれない。自分のやる事なす事すべてに自信が持てなくて、前に進むのが怖くてたまらない。
そんなようなことを彼女は話していた。私はラコタ兄から彼女に伝えておいて欲しいと言われた事を話した。それから、私は彼女にこんなようなことを話した。
今のあなたに必要なのはまず、自分を知り、認めてあげること。自分を好きになってあげること。他の人には無い、あなただけに与えられたギフトに気付くこと。
あなたには特別なギフトが備わっている。そのことに気付いてあげなければいけない。スウェットの中であなたが見たと言っていたスピリット達の姿は、紛れもなくホンモノなんだよ。スウェットの中で感じたこと、体験したことはすべてホンモノなんだよ。他の誰にでも感じたり、体験できたりするものじゃない。あなたを守っているスピリット達がそうさせてくれてるんだよ。
あなたは決して一人きりじゃない。あなたの周囲には、いつもあなたの事を応援し、励まし、導いてくれているスピリット達が存在するからね。あなたが自分を知り、認めてあげて、そしてあなたのことを守ってくれているスピリット達の存在に気付き、感謝するようになると、スピリット達はあなたのことを今までよりももっと守りやすくなる。
自分に自信が無い、自分を好きじゃないってことは、守ってくれているスピリット達に対して失礼だよ。自信持って良いんだよ。先に進んだって良いんだよ。たとえそれが、結果的に思い通りの方向に進まなかったとしても、それは次のステップに進むために必要不可欠な学びだったんだから…。この世で起こる事はすべて必然。無駄な事なんて一つも無いんだよ。
これらのことは、彼女のスピリットが私の口を通して「言わせ」たものだ。私はこの時、彼女を助けるために、純粋な道具になっただけなのだ。
実はね、私もあなたの年齢の時に、同じ体験をしたんだよ。当時付き合っていた男の子から、全く同じ事を言われたことがあるの。その時の彼も、今の私と同じことを言ってた。“君のスピリットが僕の口を借りているだけ。これは君のスピリット、つまり君自身の言葉でもあるんだ” ってね。
私もあなたの年齢の頃には、確固たるビジョンを持っていなかった。探し始めたばかりだった。それから徐々に、色んな方法で、ビジョンを確信していった。
私の場合、次のステップに進むために大きく貢献してくれたのは、当時付き合っていた男の子だった。彼と別れた後、私は一人で旅を続けた。そうして、ナバホのメディスンマンとかヒーラーの友人達の口を通して、また自分自身の白昼夢 (いわゆる視覚的なビジョン) や夢を通して、自分のビジョンを得てきた。
ビジョンを得てからも、まだまだ進むべき道のりは長い。全く形になっていないかもしれないって感じることもある。でも、通ってきた道を振り返ると、随分進歩してきたとも感じる。
迷いの道は、誰でも通る道。それなら、それを楽しんじゃうっていうのも手だよね。
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あのとき時間を共有した私の友人へ
あなたと話していて、いろんなことを思い出すきっかけをもらいました。あなたの言った言葉が初々しくて、初心にかえらせてもらえたような気がします。
貴重な時間をどうもありがとう。この日、あなたと共に過ごせたこと、話せたことに感謝しています。
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17.ベアビュート ラコタツアー
スウェットを終えた翌日は、ベアビュートに登る予定だった。ここはラコタ語では、 Mato Paha (Bear Mountain ) と呼ばれている。ラコタ以外の人も、ビジョンクエストやセレモニーを行っている聖地だ。この聖地の中では、写真を撮ったり大声で話したりする事は出来ない。
ラコタ兄の家を出発したときには快晴だった天気が、ベアビュートに近付くにつれ、段々と雨雲と雷が寄ってきた。
ここは、ボスがビジョンクエストを行った場所だからだろう。ボスには男性雨と雷を呼ぶパワーがある。
ビジョンクエストというのは、白いバッファローの女がラコタに伝えた教えの中の一つ。
ビジョンの探求者は自分だけの場所を見付け、3メートル程の円を描く。そのサークルの中には、水以外のものは一切持ち込めない。人によっては自分の排出する尿も水のボトルに取っておいて、それを飲用することがある。
探求者は2日ないし4日間、このサークルの中で過ごす。食料は一切取らない。探求中には、このサークルから出るように仕向けることが、いろいろと起こる。孤独や恐れ、不安という内面的な障害、動物やヘビなどの出現という物理的な障害などだ。探求中はこのサークルの外に出てはいけない。様々な誘惑を振り切らなければ、ビジョンは得られないのだ。
この探求の中で探求者は、自分が何者なのかを認識し、今生でやり遂げなければならない使命を思い出す。そして、自己の成長、スピリチュアルな導きを ワカンタンカに祈り続ける。
この探求は自己の内面へと旅するもので、非常に過酷なものだ。 ビジョンクエストは crying for a vision とも言われている。
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ベアビュートを登り始めると、所々に色とりどりのタバコタイが木の枝に括りつけられているのが見える。 (タバコタイというのは、5センチ角くらいの小さな布にタバコの葉を詰めたもの。結ぶ時にはその人の祈りやコミットメントを盛り込む) あちらこちらから、いろんな種類のエネルギーが交錯しているのが感じられる。
途中まで登った辺りで、雨雲と雷がすぐそこまで来ているのが見えた。私達はツアーのお客さん達の体調を気遣い、頂上まで登るのを断念した。
その代わり、頂上手前の所で、一人になる時間を取ることにした。“みなさん、各自好きな場所に行って、祈りの時間を持つことにしましょう”、とボスが言った。
私は下の方まで降りていった。大きな岩が2つある場所を見付けて、その真ん中で祈りを捧げた。コーンポラン (トウモロコシの花粉) をオファリングして、 “この大地の人々(ラコタの人々)と、私達日本人、それにナバホの人々を含め他のアメリカ先住民の人々が、互いに協力し合いながら、この美しい大地、環境を守っていけるように”、と祈った。その場所では、男性的な力に満ち溢れていた。
祈りを終えて集合場所に戻ってきた時、みんなの表情とエネルギーは先程とは明らかに違っていた。
麓まで下りる時には、優しい雨が降ってきた。スウェットの後、シャワーを浴びていない私達にとって、この優しい雨は浄化のシャワーのように感じた。
車に乗ってから、一番若い女性客 がこんなことを私に言った。
「帰り道の雨は、あなたが呼んだのね。行きの時の、激しい雨と雷はボスが呼んだものなんだよね」
きっとそうなんだろう。ボスのエネルギーはとても男性的で、私のエネルギーはとても女性的なものだ。そういう意味で、私達はうまくバランスが取れている。だから私は、ボスと一緒に仕事をしていると、安心できるのだと思う。
